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memper-kan の機能について [特講]

gula さんからご質問いただいた memper-kan について、少し考えてみたのですが、やっぱりどうも、きちんとお答えできそうもありません。でも、だからといってまったくお答えしないのも、奥歯に物がはさまったようで気分が悪いでしょうから、とりあえず今の時点での考えを、不十分ながら書いてみたいと思います。ですから、正式の回答ではなくて私の感想という感じで話半分で読んでいただけたらと思います。いつも同様(いつも以上に)、つっこみ・反論等お待ちしています。

(注)長いので注意

例として、A級2002年第1回の問題を取り上げましょう。
Imbuhan gabung memper-kan yang bermakna menjadikan supaya terdapat pada kalimat mana?
A. Panitia sudah mempersiapkan semua bahan untuk seminar ini.
B. Perempuan itu terkenal sering mempermainkan lelaki yang berduit.
C. Mereka masih saja mempersoalkan masalah itu, padahal sudah beres.
D. Kamu tidak boleh memperbandingkan keadaan dirimu dengan keadaanku.

先にばらしてしまうと、解答はAの mempersiapkan でした。なぜAが正解なのか、身もふたもない言い方をしてしまえば、「mempersiapkan は menjadikan ... supaya siap と言いかえられるが、他のは言いかえられないから」です。もっと言えば、「mempersiapkan を辞書で引くと、menjadikan bersiap と書いてあるから」です。しかしこれでは、もちろん答になってません。
(余談ですが、「ふつうの」インドネシア人にこの問題を質問しても、たぶんそんな答しか返ってこないでしょう。しかたのないことです。ふつう私たちは、(私のような変わり者を除いて)自分の母語の文法について深く考えないものです。あなたは、例えば日本語の「は」と「が」、「に」と「へ」の使い分けを外国人に説明できますか?)
Aの mempersiapkan は menjadikan ... supaya siap と言いかえられることが「辞書」から分かったので、Aの文の意味を考えてみると、
A. Panitia sudah mempersiapkan semua bahan untuk seminar ini.
「委員会はすでにこのセミナーのためのすべての材料が準備されているようにした
=「委員会はすでにこのセミナーのためのすべての材料を準備した
となります。

他の選択肢が menjadikan ... supaya になるかどうか確認してみると、
B. Perempuan itu terkenal sering mempermainkan lelaki yang berduit.
 ?「その女は金を持っている男をいつも遊ぶようにする(?)ことで有名だ」
 正しくは「その女は金を持っている男をいつももて遊ぶことで有名だ」
C. Mereka masih saja mempersoalkan masalah itu, padahal sudah beres.
 ?「彼らはまだその問題を問題ようにしている(??)、もう片付いているのに」
 正しくは「彼らはまだその問題を問題にしている、もう片付いているのに」
D. Kamu tidak boleh memperbandingkan keadaan dirimu dengan keadaanku.
 ?「君は君自身の状態を僕の状態と比較ように(??)してはいけない」
 正しくは「君は君自身の状態を僕の状態と比較してはいけない」
となり、menjadikan ... supaya という意味にならないことがわかります。一見すると、CやDもちょっと良さそうに思われるかもしれませんが、全然ダメです。なぜなら、supaya は接続詞(と言っていいのでしょうか?)で、ふつう後ろに動詞や形容詞が来ますよね。基語 soal 「問題」、banding 「比較」はいずれも名詞なので、supaya soal や supaya banding はインドネシア語として成り立たないのです。memper-kan が menjadikan ... supaya という意味になるためには、少なくとも基語が動詞・形容詞であることが条件です。

memper-kan の意味の一つである menjadikan supaya とはどういうことなのか、もう少し考えてみますと、これは一種の kausatif「使役」ではないかと思われます。「使役」とは、例えば me- kan 動詞の次のような機能を言います。
Ayah memandikan anaknya.
「父は子どもを水浴びさせる」
この memandikan は、次のように言いかえることができます。
Ayah memandikan anaknya. = Ayah membuat anaknya mandi.
英語 Father made his son take a bath. において、make を「使役動詞」と呼んでいたことを思い出してください(余談ですが、英語の使役動詞 make は原型不定詞を取るのでした)。
使役とは結局のところどういうことかと言えば、
「ふつうの文では、主語Sが動詞Vの動作主 agent であるが、使役の文では目的語Oが動詞Vの動作主になる(すなわち、OとVの間に主語述語関係が成り立つ)」ということです。
Ayah mandi.
では mandi する人は ayah ですが、
Ayah memandikan anaknya.
において、mandi する人は ayah ではなく anak であることを確認してください。
memandikan では「強制的に」mandi させるのですが、menjadikan ... supaya では「~になるようにする」ですから、「強制的」ではない、という違いがあるように思います。

memper-kan の意味の一つ menjadikan ... supaya が一種の「使役」であるとすれば、解き方のヒントが得られました。それは、「目的語と基語との間に主語述語関係が成り立つかどうか」です。
A. Panitia sudah mempersiapkan semua bahan untuk seminar ini.
「委員会はすでにこのセミナーのためのすべての材料が準備されているようにした(=準備した)」
において、基語 siap「準備されている」ものは何かと言えば、目的語 semua bahan です。断じて、主語 panitia ではありません。
○ Semua bahan siap. 「すべての材料が準備されている」
× Panitia siap.  「委員会が準備されている」

mempertemukan も mempersiapkan 同様に、menjadikan ... supaya という意味なのでした。次の例文を考えてみましょう。
Dia mempertemukan temannya yang akan melamar pekerjaan itu dengan atasannya.
「彼は、その仕事に応募する友人を、上司に引き合わせた」
mempertemukan = menjadikan ... supaya bertemu とはすなわち、
「atasan と bertemu するのは、主語 dia ではなく目的語 teman である」
ということなのです。

いかがでしょうか。これで解決、と言いたいところですが、実は memperdengarkan にまた大きな問題点があるように思います。とりあえず、今日はここまで。(続きがあるか保証できません。あしからず)


コメント(5) 

コメント 5

gula

jaman様
貴重なお時間を割いておこたえ頂き、ありがとうございます!
不十分とおっしゃっていますが、私は、ご高察になるほどと納得しました。

実は、2日ほど前、ふとB先生著の「インドネシア語講座」には
このmemper~kanがどのように説明されているのかなと思いつき
確認してみました。
試験問題 出題者はB先生 他 の方々と伺いましたので。
(先生にはこの前、B級試験のUjian Lisanで初めてお会いしましたが、
試験中は相当怖かったです。普段はどんな方なんでしょうか?)

①他動詞化する : ~になるようにする、~にする
 mempersoalkan、mempermasalahkanなど
②~になるようにする、~させる (使役)
 memperlihatkan、 memperdengarkanなど
※該当語を用いた例文の紹介のみで文法的な説明はありません。
今回質問させて頂いたmenjadi supayaは、jaman様がご説明下さっている通り
②に該当するのだと思うのですが、ただし、
mempermainkanは 先生の本では②の使役の例としてあげられています。
この場合、使役は使役でも(「もてあそばれる」のは男)、
menjadi supayaには当てはめられないので、選択肢から外れるのでしょうね。
・・・・とことん、難しい問題だと思いました。
by gula (2005-07-02 13:25) 

jaman

memper-kan (およびmemper-i) はとても難しくて、従来の本では納得のいく説明がなされていません。
バタオネ(=B先生)本のほか、いつも参照する牛江清名「インドネシア語の入門」、松岡邦夫「インドネシア語文法研究」も見ましたが、よくわかりませんね。
memper- の per- は ber- であるという説明がなされることがあるのですが(松岡ほか)、すべての memper- 動詞にはとうていあてはまりません。しかし、もしかしたら大きなヒントかも。つまり、mempersiapkan < bersiap やmempertemukan < bertemu における memper- と、memperdengarkan < mendengar (*berdengar) や memperlihatkan < melihat (*berlihat) における memper- は根本的にちがうのではないか。この線でもう少し考えてみようと思います。
by jaman (2005-07-03 22:58) 

memper-kan、me-kan、memper-

アルベルトウスです。インターネットがしばらく使えなくなりましてコメントは出来なかったのです。すみません。
インドネシア語と英語の使役を考える前に、次の日本語を考えましょう。「これは、外大日本課程の文法の授業のマトメです。)
 ・鐘を鳴らす -------「モノ」を鳴らす
-------「モノ」を鳴らせる (日本語として余り言えない)
 ・鳥を鳴かせる------「声を出せる生き物」を鳴かせる
  鳥を鳴かす ------「声を出せる生き物」を鳴かす
  鳥に鳴かせる------あまり言えないようですが。
 ・子ドモを泣かせる---「人間」を泣かせる
  子ドモに泣かせる--「人間」を泣かせる
  子ドモを泣かす----「人間」を泣かす
.................
それは、さて置いて、インドネシア語をインドネシア語で見ましょう。
mempermerah は、何となく、元々の状態は大きいけど、もう少し大きくする感じがします。membuat sesuatu menjadi semakin besar.
memerahkanは、元の状態はmerahではなく、memerahkanという動作が導入してから、merahになるのです。
多分、こういうのは、当たり前すぎて、どの教科書にも書いたことがないと思います。で、次の文章を検討しましょう。
Pemerintah membesarkan jalan. に対してPemerintah memperbesar jalanのほうが自然?よく使われているのは、なぜか。私の見解として、membesarkan jalan は、元々のjalan の状態がbesar ではない----「小さいと理解されがちですが、必ずしもそうとは限りませんがbesarはkecilと対立しているので、何となくkecilがbesarではない状態」-----しかし、モノは、見方によれば、besarになれるので、今の大きさをさらに大きくするということは、自然な発想なのです。日本語でも、「原始の小ささはどれぐらいですか?」って言いませんよね。やはり、どんなに小さくても「大きさ」をずっと使います。ですから、memperbesar のほうがmembesarkanよりも自然に聞こえるのではないか。
 では、siapにmemper-をつけましょう。mempersiapになりますね。しかし、mempersiapは、どのインドネシア人に聞いても、やはり可笑しいです。私は、memper-kanを使って、状態を表す品詞を定義したくなるんですが、memper-kanが付けられて自然に聞こえる語は、どうも限られているようですので、共通点を探したほうがいいかもしれません。siap,soal,masalah,hitung,main,(感覚的temu,dengar=しかしrasaは自然ではないのはなぜか。), lihat,hati,kerja,(論理判断salah=しかし、benarは自然ではないのはなぜか。)
 
Panitia sudah mempersiapkan semua bahan untuk seminar ini.
何となく、委員は、この会議のために、計画的に(?)わざわざ(?)全ての資料を用意した。
Panitia sudah menyiapkan semua bahan untuk seminar ini.
何となく、普通に準備する という感じがしますが、どうしてそういう風に感じられるかはまだ分かっていません。ただgoogleで検索したのですが、menyiapkanは91,600に対して、mempersiapkanは73,900件が出ました。ほぼ同じように使われていますね。memperbandingkanは1,040に対してmembandingkanは23,000です。bandingの場合は、membandingkanのほうが、自然ですね。mempersalahkanは523件に対して、menyalahkanは28,900です。benarで検索したら、memperbenarkanは1件しかなくて、それもマレー語の資料です。
 menjadikan sesuatu supaya.....というのは、どうも無理があるようですが、Pusat Bahasaの方の見解を聞きたいですね。

ただ、memperがあるだけで、何となく、機械的に、わざと、計画的に、意図的に というニュアンスがあるのです。
by memper-kan、me-kan、memper- (2005-07-07 01:30) 

INJ albertus

原始 ではなく 原子 です。
by INJ albertus (2005-07-07 02:02) 

INJ albertus

S先生のblogでは、こんな書き込みがありますが、
......berlaku 1,2 は,他動詞では,このように memperlakukan, memberlakukan に分かれるが,PE-AN 名詞ではまた perlakuan ....
実は、memperlakukan の名詞はperlakuanに対して、memberlakukanの名詞はpemberlakuanです。一通りの名詞のではなく、二通りの名詞の形成があります。memperlakukanとmemberlakukanのpe-anがperlakuanだけになっていることの理由を知りたいのですが。。
by INJ albertus (2005-08-04 13:08) 

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